焼杉が浮かぶ家
鎌倉の分譲地に建つ住宅である。
一階は、コンクリート調のランデックス塗装による矩形の量塊として計画した。凹凸を抑えた無機質な外形は、建物の重心を低く定め、敷地に静かに接地する基壇となる。
その上に、焼杉をまとった二階を載せている。二階は三方へ張り出し、バルコニーを組み込みながら、屋根には緩やかな勾配をもつ切妻を架けた。
水平に伸びる張り出しと、切妻屋根がつくるわずかな動きが重なり、静的な一階に対して、上階には日本建築に通じる動態が与えられている。
無機質で抽象的な一階と、焼杉・張り出し・切妻屋根によって構成される二階。
モダニズム建築の静けさと、日本建築的な軒・陰影・屋根の身体性を上下に重ねることで、建物には一見相反する要素が同居している。
その構成のずれが、単なる素材の対比を超えて、黒い木の箱が基壇の上に浮かび上がるような独特の佇まいを生み出した。
下階の外壁は、コンクリートのような静けさと重さをもつ。一方、上階の焼杉は、炭化した木肌による深い陰影をまとい、時間帯によって表情を変える。
異なる質量をもつ二つの素材を上下に重ねることで、建物全体には重さと軽さが同時に現れる。
三方への張り出しは、単に外形上の特徴ではなく、水平に伸びる影を生み、外観に明確な重心と浮遊感を与えている。
夕景には、窓から漏れる光が焼杉の黒い面に滲み、街並みに対して静かな輪郭を浮かび上がらせる。
内部では、二階に約34帖のLDKを配置した。細かく分節せず、大きなひとつの空間として扱うことで、生活の中心となる場所に余白をもたせている。
周辺環境から少し持ち上げられたこの大きな居場所は、外部に対して開きながらも、焼杉の外皮によって落ち着いた内向性を保っている。
コンクリート調の静かな基壇と、三方に張り出す焼杉の上階。
この住宅は、異なる建築言語を重ねることで生まれる緊張を、鎌倉の住宅地の中に静かな浮遊感として立ち上げる試みである。